6.Drager
EVITA 4 (EVT-4000)
1.特徴(図III-6-1)
 1985年のEVT-1000を始めとして、1990年には基本機能に限定した廉価版のEVT-800が、1993年にはマイナーチェンジ版のEVT-2000(Evita 2)と、1992年にはEVT-880が、1995年にはEVT-4000(Evita 4)が発売された。1997年にはEVT-2200(Evita2 Dura)が発売されている。Evitaは先進的なハードとソフトを兼備する人工呼吸機で、最高機種のEVT-4000では、優れた呼気弁制御技術の産物であるBIPAPやAutoFlow、吸気フロー技術を生かしたPressure Limited Ventilation(P max 制御), 圧上昇速度可変(slope control of pressure rise),優れたセンシング技術による最高水準のトリガー感度、成人領域(体重15kg以上)より小児領域(体重3kg以上)まで対応可能、(オプションで新生児のPTVが可能)、大型カラー液晶タッチパネルによる操作、等の多様な機能を満載している。コンピュータソフトは継続的に改良されていて、現在は日本語対応のVer.1.11である。(注;年代はドイツ本国での発売年で、米国や日本は1〜2年遅れている)
2.性能
1)利用できるモード
    IPPV(=Conrol/Assist)
    ASB (=PSV)
    SIMV +ASB
    EMMV +ASB
    BIPAP +ASB
    APRV
    +PLV(pressure limited ventilation)
    +PEEP
    +Intermittent PEEP
    +Apnea ventilation
    +AutoFlow
    +slope control of pressure rise
2)基本データ
ガス供給システム・・・・・・初期流量最大8ms間に120 LPM
最大吸気ガス流量
    強制換気・・・・・・・・・・・・120LPM 
    ASB  ・・・・・・・・・・・・・・180LPM 
    吸気ガススルーレート・・・・・・・250L/s   
    最大強制換気数・・・・・・100BPM 
    最大SIMV回数・・・・100BPM 
 
3.制御回路,制御機構
1)制御機構の概説
 EVITAはコンピューター制御の人工呼吸器で、control unit, electronics, pneumaticsの各ユニットにMPU(モトローラ68332a)を装備し、それぞれをCAN bus(1MBit/sの伝達速度)で接続する。ディスプレーにも専用のMPUを装備する。メモリーには3.5Mbyte Flash EPROM と1.5MBite RAMを装備する。
2)機械的機構の特徴
 ニューマティック回路は標準的であるが、センサーの利用法に特徴がある。圧トランスデューサーや酸素濃度センサー、フローセンサーを自動的にしかも、患者に使用したまま校正を可能にする機構を採用する。そのため経年変化の少ない安定したセンシングが可能になっている。
3)ガス流量計測
(a)吸気側
 フローコントロールバルブ前後の圧情報とフローコントロールバルブの位置情報より吸気流量や吸気量を演算する。
(b)呼気側
 呼気ガス流量は熱線型"hot wire"のフロートランスデューサーで計測される。これはディスポーザブルになっているが、滅菌を考慮しなければ、連続使用も可能である。このセンサーの0点校正は、吸気相にフローがない時に行われる。換気量はA/D変換された後、デジタルフィルター(2nd.transversal & 4th.bessel filter)で処理される。これにより分時換気量の平均化が行われ、一分間の集積に近い特性をもたらす。呼気分時換気量の計測データーは、(呼気弁のPEEP補償情報としても用いられるが、)原則的にはアラーム専用であり、機械制御系とは独立している。
4)吸気バルブ(図III-6-2)
 吸気バルブ(ニューマティック図のY8,Y9)はHPSV(High Pressure Servo Valve)と呼ばれているが、これは、音楽用のスピーカーを駆動する電磁コイルと同様の原理で駆動される。吸気バルブ駆動回路は、圧や流量情報に基づいて、デジタル回路によるサーボ制御がされている。
5)呼気バルブ(図III-6-3)
 EVT-1000の脱着式の呼気弁ユニットは、扱いが容易であったが、構造が複雑で重量があり高価であった。EVT-2000以降は小型軽量、簡単な構造に改良され、結果的に廉価になった。呼気バルブはダイアフラム弁であるが、この駆動ガス発生機構は、電磁コイルによって任意の圧に調整できるPEEPコントローラー(ニューマティック図のY2)とこれを制御するデジタル回路より成り立つ。PEEPコントローラーバルブはHPSVと類似機能をする弁で駆動電流により任意のガス流量に調整できる。抵抗R2を経た駆動ガスより任意の量を大気に解放することで目的の呼気弁駆動圧(=PEEP駆動圧)を作る。呼気弁駆動圧は、呼気側の圧センサーの情報や呼気ガス流量情報に基づいてデジタル的に調整されている。特にBIPAP作動時には呼気弁駆動系が吸気側と同レベルの役割を分担する。
 
4.ニューマティック回路(図III-6-4)
 O2/Airのガスは、入力フィルタF1.1,F1.2で中央配管よりの埃、水分を除去した後、回路駆動ガスを減圧弁 DR1.1,DR1.2を経由して供給する。通常の駆動ガスは Airを使用しているが Airが遮断されたときO2 で回路動作を確保するためY1.1で駆動ガス源を切替える。Y1.3は気道内圧アラーム設定値を越えた圧を逃がすための緊急弁である。
O2/Airの圧センサS6.1,S6.2はフローコントロールバルブ「HPSV」Y2.1,Y2.2直前での圧を計測している。この計測データと気道内圧のデータをもとに、フローコントロールバルブY2.1,Y2.2はO2/Airの混合と流量制御の二役を一期的におこなっている。Y3.1,D3.1,F3.1,D3.2は機械故障時やエア配管からの供給ガスが途絶えた時に患者回路を大気に開放するシステムである。Y1.2,Y3.2 はO2 センサS3.1の校正用システムである。O2 センサの校正キーを押すとY1.2が開いてY3.2を開くと同時に校正用のガスをY3.3に供給する。Y3.3は患者へのガス供給とO2 センサへの校正ガスとをセパレートしながら校正ガスを流すことができる。これによりO2 センサ校正中のガスが患者に混入することなしに校正が可能となったのでO2 センサ校正のために回路を開放する必要が無くなった。D3.3は患者回路が異常に高圧になった事態を想定しての解放弁(安全弁)である。Y1.4はネブライザ駆動ガスを供給する。Y6.1,Y6.2は気道内圧センサの校正弁で、この作動によりY6.1,Y6.2は、それぞれの気道内圧センサs6.1,s6.2を大気に開放しゼロ校正をおこなう。P1,P2 は将来、口腔内圧や食道内圧などを計測するオプションが追加開発された際に対応できるように本体正面に開いているポートである。(現在未使用)s6.2はY4.1で発生させている圧を基準として呼気ラインの圧変動を常時監視しており、トリガーやディマンドのための信号を送る。回路の簡素化により呼気弁駆動とPEEP調整は1つのバルブY4.1でおこなっている。このPEEP/PIPバルブは電磁駆動バルブであってPEEPやBIPAP モードの高圧相の圧(PIP )をコントロールする。このバルブで作られた圧で着脱式の呼気弁ユニット(ペーシェントシステム)内の呼気弁を駆動している。ペーシェントシステム内の Sはメッシュ板で呼気流を整流する。S5.1はフローセンサである。フローセンサの校正はソフトウェアでコントロールされており吸気時間中の呼気流量が無い時間中におこなわれる。エビタのニューマチック回路は基本的に電磁弁→ニューマティックと二段重ねの駆動方法となっているのは、呼気弁ユニット( Y5.1,D5.1,S,S5.1が入っているブロック = ペーシェントシステム)を着脱するためである。呼気のフローセンサS5.1には熱線式が使われている。
 
5.制御ソフト
1)トリガー方式
 Evita は圧ディマンドとトリガーを明確に区別している点に特徴をもつ。Evita4では呼気弁直前の気道内圧変動を感知する圧ディマンドによって吸気フローバルブ(Y2.1,Y2.2)を開け、その時に生じる流量を基にトリガーをおこなうフロートリガー方式を採用している。EVT-1000やEVT-2000では圧トリガーとフロートリガーが混在しているが、Evita4ではすべてフロートリガーに統一されている。フロートリガー感度を調整する必要性はほとんど感じないが、必要ならば、換気モード設定画面にある"Extra settings"キーを押して0.3〜15LPM の間で設定することもできる。仮に0.3LPMに設定してもAuto-Cycleはまずおこらない程安定した作動をする。ディマンド感度はΔ0.2mbar に固定されている。驚くべき事にベースフローはない。メーカーによると、ベースフローがない根拠は[その必要がないと]説明されている。しかし、NeoFlow(BabyLog 8000の機能をそのまま組み込む、新生児用の換気機能のオプション。フローセンサーはBabyLog 8000と同じもので、Yピース先端と気管チューブの間に設置される。)ではベースフローを使っているので、ディレイを最少にする必然性とセンサーそのものの違いによると推定される。少なくとも、外付けされた熱線型センサーでは、精度維持と信頼性に問題を生じる可能性を完全に除外できないとの認識があるためである。ベースフローがなければ、吸気側のフロー情報だけでフロートリガー処理をおこなうことが可能になる。
2)圧上昇速度可変(slope control of pressure rise)
 ASB,BIPAP,AutoFlow等のすべての圧換気モードで利用できる。吸気の立ち上げ時間(slope controlの期間)では、基準圧は経時的に連続的に上昇していく。吸気圧は基準圧より-0.6mbar以内になるように吸気バルブがサーボ制御される。圧上昇速度は 64ms〜2.0s の範囲で可変である。
3)IPPV
 このモードはASSIST/CONTROLを意味し、ボリューム換気(Volume ventilation)による強制換気モードである。一回換気量は0.1〜2.0L(adult),0.02〜0.3L(pediatrics)で設定できる。強制換気はPLVもしくはAutoFlowを選択できる。強制換気時間以外はすべてトリガーウィンドーとして扱われる。
4)PLV(Pressure Limited Ventilation)(図III-6-5)
 従量式換気"Volume ventilation"と従圧式換気"Pressure ventilation"を両立させる換気方法で、"Pmax"で設定された最高気道内圧以下に気道内圧を制限する。この際でも一回換気量は減少しない。図のように気道内圧が"Pmax"に達するとその圧を超えないように(=ピークカット)吸気流量を下げて、設定された一回換気量が入るまで吸気を続ける(volume cycleのPCVになる)。この際、TEIP(吸気プラトー時間)が減少する。TEIPをこえて吸気時間が延長される事はないので、これが換気量の補償の限界になる。換気量が減少した際には"volume not constant"とメッセージされて警報音が鳴る。なお、自動的に設定値+10mbarの値が最高気道内圧のアラームレベルになる。
5)AutoFlow(図III-6-6)w
 換気モードではないが、IPPV, SIMV, EMMV モードに対して付加できる機能である。圧換気であるBIPAP に一回換気量を保証する機能と言える。強制換気に対して設定するものでSIMVなど自発呼吸相での動作は付加する前と全くかわりはない。この機能を選択すると、まず目標圧を設定するために設定された吸気時間いっぱいに使って規定された一回換気量を入れる(通常のボリューム換気)。この時に生じるプラトー圧を初期設定圧とする。2回目以降は、前回のコンプライアンスと強制換気時の換気量より演算して換気圧を設定する。変化量を3mbar以内に限定している。圧変化の上限は圧上限アラームの値−5mbarとなっている。また換気量の上限を "Vti"アラームで設定することもできる(アラームと同時に低圧相へ移行する)。従来の従量式(ボリュームコントロール)の設定感覚でファイティングを起こしにくい「幅をもった」従圧的設定が可能な機能とも言える。このモードでも圧上昇速度を調整可能である。
6)SIMV
 EVT-4000のトリガーウィンドは5秒固定で、SIMVサイクルの最初のトリガーに対してのみ強制換気がおこなわれる。SIMVを12回以上に設定すると1回のSIMVサイクルの時間が12/60=5秒、すなわちSIMVサイクルの全部がトリガーウィンドになる。1回のSIMVサイクル中に初めておこなった吸気に対してトリガーし強制換気をおこない、残りの時間が自発呼吸相となる。次のトリガーウィンドの前に開始された吸気が次のトリガーウィンドまで続いた場合は、次のトリガーウィンドの開始と同時に自発吸気は強制換気へ移行する。ただしこの場合の強制換気量は、設定された一回換気量から自発吸気で吸ったガス量を除いた量が強制換気として供給されるので、危険な過剰吸気は回避される。EVT-4000では1分間に設定したSIMV回数強制換気がおこなわれ、自発呼吸があっても強制換気回数は変わらない。(設定値±1回/分)
7)ASB(図III-6-7)
 Drager社ではPSV類似の自発呼吸補助モードをASBと呼んでいる。ASBでは圧立ち上げ期をphase-1 圧維持期をphase-2 としている。一般のASBはいきなりphase-2 になるASBであると表現できる。最大供給可能吸気ガス流量が高い機器では高いPSVレベルでは、急激に気道に圧力が加わるので、強い圧迫感をもたらし、反射的にPSVに逆らう現象も認めらる。これを解決するためにASBではphase-1とphase-2に分けて制御している。 phase-1は、圧上昇していく期間で、基準圧が経時的に連続的に上昇していく。この速度(つまりphase-1 の時間)は 64ms〜2.0s の範囲で可変である。phase 1では、吸気圧が基準圧より-0.6mbar以内になるように吸気バルブが調整される。-0.6mbar以上の差があれば初期吸気ガス流量は120LPMになる。もし、吸気圧が基準圧を超えるとASBは終了し、直ちに呼気相に移行する。phase 2は、設定圧を維持する段階であるが、ピーク流量の25%(6%,小児モードモード時)まで吸気流量が低下すると、吸気相の終了と機械は判断し、呼気相に移行する。なお、吸気時間は最大4s(1.5s,小児モード時)に制限される。
8)EMMV
 Drager方式のEMMV は、Engstrom社製Erica,Elviraの方式と類似している。Evita では過去20秒間のデータに基づき計算した吸気分時換気量が(具体的なアルゴリズムは企業秘密)設定した目標分時換気量より下回ったときに Vt,fIMVのSIMVサイクルが始まる。(トリガーウィンド、吸気相、呼気相の順)目標分時換気量よりはるかに多い患者分時換気量が起きたのち、突然アプニアになった場合でも設定fIMV が8回以上なら7.5秒+トリガーウィンド時間、1〜8回の設定になっている場合は1回のSIMVサイクル時間+トリガーウィンド時間後に強制換気がおこなわれる。トリガーウィンド時間は5秒固定である。したがって、実際に無呼吸が生じてから強制換気が開始されるまでの時間は、12.5秒〜(60/fIMV +5)秒が必要となる。Evita のEMMV は吸気側の分時換気量で制御されているので呼気側のフローセンサの熱線が切れていたり、校正が狂っていたりしてもEMMV の動作には影響しない。
9)BIPAP
 Evita によって導入されたBIPAPは当初、CPAPのバリエーションであったが、 Evita2以降はPCV類似の換気モードを含む汎用モードとなった。このモードは2つのレベルのCPAPの圧(高圧相:Pinsp=0〜80mbar,低圧相:CPAP=0〜35mbar) を設定した任意の時間幅(BIPAP-APRVの場合0.2〜60秒)で交互に切り替えて呼吸を補助する換気法である。BIPAP ではCPAPの圧が低圧→高圧あるいは高圧→低圧へ切り替わるときにもトリガーウィンドが開く。このトリガーウィンドは設定された時間幅の終末から25%に開き、自発呼吸に同期してCPAPレベルが切り替わる。低圧相から高圧相への切り替えの認識条件にはフロートリガー(0.3〜15LPM)が採用されている。高圧相より低圧相の移行は吸気ガス流量が0LPMになった時点で行われる。低圧相ではASBも利用できるのでSIMV(PCV)+PSV〜PCV〜CPAPの変法の概念を包括する多機能なモードである。しかも、BIPAPは吸気・呼気バルブ両方の共調作動でおこなわれるので、圧波形にオーバーシュートやアンダーシュートが極めて少ない特性があるばかりでなく、呼気にもトリガーが作動することと相まって理想的な圧換気を提供する。このモードでも圧上昇速度を調整可能である。なお、EVT-4000ではAPRVにはトリガーウィンドーはなく、自発呼吸に同期せず、圧が切り替わる。
10)Intermittent PEEP(III-6-8)
IPPVモードのみ有効。EVITAではPEEP圧を変化させてSIGHをかける。肺胞の虚脱を防ぐという本来の目的を考えると、ボリュームによるSIGHより、圧によるSIGHの方が論理的である。この方が気道内圧の異常上昇が少ない。PLVと相まって異常な圧の添加を予防する。
11)Apnea ventilation(無呼吸バックアップ)
 EMMV による低換気へのバックアップモードがあるので、無呼吸バックアップ機能は不要と思うが、Evita4では、さらに無呼吸バックアップ機能"Apnea ventilation"がある。この機能はEMMV,IPPV以外のモード、すなわちSIMV,BIPAP,APRV,ASB の各モードに付加することができる。この機能を付加すると、無呼吸が設定した時間(15〜60秒で設定可能)持続したときアラームを鳴らすと同時に強制換気に移行する。このバックアップ動作の時の一回換気量と呼吸回数とは別個設定することが出来る。無呼吸後に強制換気に移行するのはBENETT-7200aeの"Apnea ventilation"と似ているが、BENETT-7200ae では"Apnea ventilation" 中に自発呼吸を検知すると自動的にIPPV動作が解除され自発呼吸動作に戻るが、Evita シリーズでは操作者が確認してリセットキーを押さないかぎり解除されない点が異なっている。なお無呼吸アラーム"Apnea alarm"は15〜60秒で可変となっている。(初期値15秒)
12)PEEP compensator(PEEP補正)
 呼気ガスに対する呼気弁抵抗は、PEEP圧を変動させる要因になる。呼気弁では呼気流量に応じて一定の圧格差を生じるので、これを補正するために、呼気弁駆動圧は、1.9mbar/L/sに呼気流量を乗じた分だけ減じられる。原則的には、呼気のフロートランスデューサー情報はアラーム用であるが、ここにだけ、制御情報として用いられている。
13)Leak compensator(リーク補正)
 IPPV/controlモードでは、リークがあってPEEPが設定値より低下すると、リーク補償機構が働いて最大20LPM のガスが供給される。IPPV/assist モードではこの補償機構は働かない。これは補償機構が働くことによってトリガー作動を妨害する危険を排除できないからである。
SIMVやCPAPモードではリークが発生したときは自発吸気と同様に最大120LPMガスを供給してPEEPやCPAPの圧が下がらないように動作する。
14) ILV(左右肺独立換気)
 2台のEvita4を電気的に同期させて動作させる ILV(Independent lung ventilation)のためのコネクタが付属している。
15)出力
 標準でRS-232C によるデジタル出力が可能である。オプションのエビタビューを組み込んだ DOS/Vパソコン(windows3.1もしくはwindows'95動作環境)を接続すると、パソコンモニタをEvita4のスレーブモニタのようにして使用することができる。(波形やトレンドを表示)またオプションのエビタ4リンクを組み込めば気道内圧、吸気呼気ガス流量、換気量の項目についてのアナログ出力も可能である。なおオプションとして用意されているSpO計測キットを組み込めば呼吸と循環を同時に計測評価できる。ただし最近では心電図モニタにSpOが標準で組み込まれているケースが多いのでこれは必要ないかもしれない。
16)Intrinsic PEEP測定
 呼気終末時に呼気弁吸気弁を閉じてIntrinsic PEEP(内因性で生じるPEEP)の圧とそれによるトラップボリュームを計測することができる。
17)P0.1 の測定
 吸気開始が認識されたのち、100msec後の気道内陰圧をP0.1 (ピーポイントワン)と言う。P0.1 開始キーを押した後に認識した吸気開始から100msec間は呼気弁も吸気弁も閉じている閉塞期間となる。P0.1 は呼吸中枢の出力レベルの指標であり、人工呼吸器からのウィーニング成否の予測に用いられる。
18)ネブライザー
 Y1.1バルブのスイッチングで酸素濃度を調整するので、設定によっては酸素濃度に誤差を生じる。専用のネブライザーを使用しないと分時換気量や酸素濃度により誤差を生じる。吸気流量15LPM 以下の低流量に設定された場合および小児モードに切り替えた場合はネブライザ駆動ガスによる口元での換気量と酸素濃度の誤差を補償しきれないので自動的にネブライザはOFFされる。
19)バッテリーバックアップ
 電源遮断時には、内部バッテリーによって10分以上作動できる。 
20)ATC(Automatic Tube Compensation)
 ATCは電気的抜管Electronic extubationとも呼ばれ、気管チューブの気道抵抗を代償する処理である。経験的に3cmH2OのPSVは患者回路の抵抗を代償すると言われていたが、実際には図に示すように、気道のガス流量に比例した圧勾配を生じていたのである。この圧勾配の平均を、単純に3cmH2OのPSVと同等と表現していた訳である。ガス流量に伴って生じる圧勾配をあらかじめプラスして加圧する機構がATCである。ATCはすべての換気モードに付加できる。視点を変えれば、次の項目で説明するPAVでのFlow gainで補助する気道抵抗の一部分を肩代わりする機構である。この機能を使うには図に示すようにTube Comp.キーを押してOnを選択し、ET Tube(気管内挿管チューブ)かTrach. Tube(気管切開チューブ)を選択する。次にチューブサイズ、Comp.(代償する程度、0-100%)を入力する。
21)PPS(Proportional Pressure Support)
 PPSはPAVそのものである。Drager社はモード名に独自の用語を用いる悪癖があるが、これも同じである。PPSではFlow AssistとVolume Assistの2つのゲインを設定する必要がある。これらの至適ゲインを計測するには、Runaway現象を利用するのが簡便であると説明している。これらのゲインを上げていくとRunaway現象を生じる。この際には、Volume highアラームや気道圧上限アラームが絶えず作動したり、フロー曲線が急に上限に達しその後即座に下降する曲線を描く、患者は呼気筋を使って意識的に過膨張される肺の空気を呼出しようとする、オートトリガーを生じる(Flow Assist)、などが観察される。Runaway現象を生じる一歩前の80%くらいのゲインが至適ゲインであると言われている。
22)NeoFlow
 Evita4はカタログ上は3Kg以上の新生児対応であるが、さらに低体重児を対応するためのオプションがNeoFlowである。実際にはそのままでも3Kg以下の新生児でも充分トリガーできるが(Servo 300のNeonateモードでのトリガー感度と遜色ないレベルである)、より完璧をめざし、定常流・圧リリーフ換気モードを再現する。フローセンサーはBabyLog8000のものを用い、新たにインターフェースボードを背面のスロットに装着する。これによりBabyLog8000の機能がEvita4に実現できる。
6.操作体系(図III-6-8)
1)基本操作
 大型のタッチパネル式TFTディスプレイによって視覚的に設定できる。設定の基本は、@設定する項目のスクリーンノブやキーに触れるAロータリノブを回すBロータリノブを押して入力値を確定する。といったマウス的な設定方法である。項目ごとに確定操作が必要である。確定せずに他の項目に移行しても、実際には変更できていないので、とまどうケースがまま見られる。
2)設定画面
 (ホームページ的な)一番基本的な画面は、換気モード設定画面である。これは、カラー液晶画面の右側の「換気モード設定」キーを押すと表示される。この画面では上半分がグラフィック波形(Flow, Press, Volumeが選択できる)で、下半分がツマミの設定画面である。任意の4項目(例えば、Vt, f, MV, EtCO2の実測値)も数値表示できるので、ほとんどのケースではこの画面で充分である。一回換気量、酸素濃度、呼吸回数などの設定項目は、選択した換気モードに応じて、必要な項目だけツマミがあらわれる。さらに体重による設定の目安が緑の三角形で表示されている。吸気時間を設定する際には、小さなウィンドー画面が現れてI:E比を臨時的に表示してくれる。iキー(インフォメーションキー)を押すと画面最下段に操作ガイドを表示してくれる。
3)アラーム設定
 次に重要なのはアラーム設定画面である。この画面はカラー液晶画面の右側のアラーム設定のボタンを押すと表示される。上限、下限はカスタマイズされた値が初期値に入っているので、ほとんどの項目は再設定する必要がないはずである。
4)グラフ表示
 画面表示切り替えキーを押すと表示される。任意の波形を2種類表示できる。スケールは自動設定してくれる。
5)測定値
 このキーを押すと測定値(数値)、各種メカニクス画面、Log Bookを表示できる。
6)EMMV
  EMMVの目標分時換気量は一回換気量とfIMV の積で設定される。積の計算値は小さなウィンドー画面が現れて臨時的に表示してくれる。他の機器では目標分時換気量が独立した項目になっている場合が多いので、この点は注意が必要である。
7)特殊機能
 基本的な機能は予備知識がなくても設定可能であるが、最初のセットアップ(ユーザーによるカスタマイズ)は煩雑かもしれないが、一度設定すると快適に利用できる。項目によっては、不用意に変更できないようにパスワード入力を要求する。電源投入時にはアラームの設定範囲も自動で設定されるが、この初期値も変更することもできる。他にも波形の種類、常時表示させる数値データの組み合わせ、モードキーの組み合わせ、トレンド波形の組み合わせなどの初期値を変更することができる。圧単位mBar, mmH2Oも選択できる。変更しない場合はメーカー初期値が選択されている。
8)画面のカスタマイズ
 電源を投入時の開始画面(初期画面)をカスタマイズできる。@体重を設定する開始方法(DragerではIdeal body waight と呼ぶ)A成人もしくは小児、それぞれに固有の設定値により開始する方法、をあらかじめ選択できる。Aはさらに、成人、小児を選択できる開始方法、成人もしくは小児モードどちらかの固定で開始する方法の選択肢がある。難点は、例えば成人用固定モードを選択してある場合で、稀に小児用で立ち上げる必要があるケースである。この場合はカスタマイズ画面を変更してから再起動する手間が必要である。Ideal body waightによる設定画面にジャンプできるように希望する。
7.モニタ、アラーム機能
 患者関係は、必要な設定をすれば下記の条件に自動設定される。分時換気量だけはマニュアルで設定する。
1)酸素濃度
設定値60vol%以下の場合は設定値と実測値との間に4vol%以上のずれが生じたとき
設定値60vol%以上の場合は設定値と実測値との間に6vol%以上のずれが生じたアラームが発生する。
2)気道内圧
アラーム設定画面のPaw 上限値で設定した値以上になった場合。強制換気をおこなっても2呼吸続けて96msec 以上ピーク値がPEEP+5mbarを越えない場合低圧アラームを鳴らす。
3)呼気分時換気量
設定した上限、下限を逸脱した場合。
4)無呼吸
設定した秒数(15〜60秒、初期値15秒)以上呼吸が停止した場合。
5)機器作動異常
 酸素供給、圧縮空気供給、O/AIRミキサ、圧測定、ファン、フローセンサ、呼気弁ユニット、O2 センサ、温度センサ、電源、内部電子回路、内部ニューマチック回路の異常を警報する。
また、患者回路を開放しても警報する。この場合は100%O2 キーを押してから開放すればよい。
8.ディスプレイ機能(図III-6-9)
 通常は2種類の波形グラフを表示する。この波形は気道内圧、流量波形、流量波形、CO 波形、オプションを組み込むと脈波形、のうち選択して2つの波形が表示できる。通常表示される4つの計測値表示の他に、設定ツマミ、トレンドグラフ、ループ波形、測定値の一覧表示、過去の操作、アラーム履歴の一覧表(ログブック)、特殊計測表示、波形一時停止と停止した波形データの数値のデジタルでの読みとり、またオプションでSpOのデジタルデータの表示ができる。デバイスチェックなど特殊な操作をおこなうときもメニュー画面がここに展開する。流量波形にしたときSIMVモードなどでは強制換気と自発呼吸とで波形の色分けをおこなって患者の呼吸状況を把握しやすくしている。分時換気量のトレンドグラフも同様である。安価なWindows 3.1 , 95ノートパソコンにEvita Viewというソフトを組み込むと3波形のグラフィックディスプレーとして利用できるので、用意しておくと便利である。
9.患者回路構成、加湿器(図III-6-10)
 パスオーバー型の加温加湿器(アクアポール)か、ディスポ型の加温加湿器(フィッシャー&パイケル MR-410)小児や温度管理を精密にする必要がある場合はヒータ入りの加温加湿器(フィッシャー&パイケル MR-730)の内から選択することができる。アクアポールやMRー410の場合は口元に温度センサをつけるが、これはアラーム用でフィードバック制御はおこなわないので、簡単な患者回路が好みなら、この温度センサは使用しなくても良い。
10.メンテナンス
1)センサの校正
 Evita には多数の圧センサやフローセンサ、温度センサ、O センサが使用されている。圧センサと温度センサは絶えず自動校正されている。またO センサと呼気フローセンサについても、一日一回昼前後に自動校正される。O センサと呼気フローセンサ、CO センサについては必要に応じて、あるいはセンサの交換時や精度に疑問があるとき、アラームが鳴ったときに校正することができる。それぞれのセンサは患者から回路をはずす必要はなく、いつでも校正可能である。"校正"キーを押して校正したいセンサを選択してキーを押すだけである。O2 センサについては少しの酸素濃度の上昇も危険となる小児にも使用されるため、校正ガスが患者に流れるのを防ぐ回路が内蔵されているため、患者に影響を与えずに校正が実施できるようになっている。(約1分)
2)呼気弁
 呼気弁は着脱式のユニットになっていて、ユニットごと取り外し、水道水で流し洗いする。従って通常使用では分解洗浄の手間は不要である。洗浄後オートクレーブで滅菌乾燥する。この呼気弁ユニットはEVT-1000と比較してはるかに軽量・安価になった。本体には滅菌予備として合計2つ呼気弁ユニットが付属している。なお約1年間洗浄せずに連続使用して作動不良になった例が報告されている。
3)呼気側の流量計
 このフローセンサは熱線型なので滅菌不可能である。そのためディスポになっていて、患者ごとに交換することになっている。物理的には、連続使用も可能である。
4)O2 センサ
 これはガルバニックセル"galbanic cell" なので消耗すると交換が必要である。
11.定期点検
 6ヶ月ごとに技術サービスによる点検が必要。
12.欠点
1)(初期設定によって)設定画面上に選択できるモードは4種類だけである。表示されていないモードを選択するには、初期設定画面を変更した上で、再起動する手順が必要であり、現実的には実用上不可能である。
2)AutoFlowには、患者の要求する換気量に対して設定1回換気量が少なすぎれば患者に無用な換気努力を強いる危険性がある。最少換気圧が設定できればこれを防げる可能性がある。
3)グラフィックディスプレーに同時表示できるのは2波形だけである。3波形同時表示ができるようバージョンアップを望む。
4)ネブライザーを使用すると酸素濃度は最大で ±4%以内の誤差を生じる。また、低流量設定ではネブライザが使用できない。
 
 s6.1,s6.2????  Y1.1 turn over speed? Nebulizer+AutoFlow時にY1.1が作動する時のPulseの影響はPEEPに影響しないか
 
 
Evita 2 Dura(EVT-2200)
1.特徴(図III-6-11)
 Evita 2 DuraはEvita 4のレスバージョンで、やや廉価になっている。基本的にはEvita 4と同じ機構が採用されている。コスト削減のためモノクロ液晶ディスプレーを採用し、モニター機能(CO2、ループ、トレンド、ログブック、P 0.1、intrinsic PEEP、SpO2)やアナログ出力(エビタ4リンク)をオプション扱いにして省いている。操作パネルも若干変更されている。しかし、性能はEvita 4と同じで、もちろんAutoFlowやBIPAP、APRVも装備されている。このように通常使用する範囲では、Evita 4とEvita 2 Duraに実質的な差がない。
2.操作方法(図III-6-12)
 一回換気量や酸素濃度などの主要な項目は、操作パネル上に設けられている項目ボタンを押して項目を選択し、ダイアルで数値入力する。最後にダイアルを押し込んで数値を確定する。特殊項目は液晶に表示されるメニューに従いファンクションキーやダイヤルを用いて入力する。
 
Evita 2 (EVT-2000)
1.特徴(図III-6-13)
 EVT-2000はEVT-1000の改良版である。BIPAPがCPAPの変法から汎用性のある圧換気モードに発展した(狭義のBIPAPより広義のBIPAPに変遷した)。それに伴い、BIPAPがメニュー構造の上層にでてきてより設定が容易になった。また、つまみの重複をなくして操作性を向上した。さらに呼気弁ブロックをより簡素化しメンテナンス性を改良している。エビタの基本性能は共通で、高性能、高信頼性、高感度のトリガー性能や、高い最大吸気ガス流量などに特徴がある。成人より小児領域(体重3kg)まで対応できるのはEVT-4000と同じである。現時点ではEVT-4000との実用上の最大の違いはAutoFlowがない点にある。ディスプレー能力の差(小さなモノクロ液晶表示のみ)、つまみによる設定方法、最大吸気フローが若干劣る点にも差異が認められるが、性能的にはほとんど同等なので、価格差を考慮すると一般的な使用ではEVT-2000でも充分かもしれない。しかし、将来の拡張性には差がある。(EVT-4000にはPAVモードやBabylog 8000を超える新生児機能、等が予定されている)。パソコンとの接続やCO2 の計測、波形表示などもできる。
2.性能
1)利用できるモード
    IPPV(=Conrol/Assist)
    ASB (=PSV)
    SIMV+ASB
    MMV+ASB
    BIPAP
    BIPAP-SIMV
    BIPAP-APRV
------------------------------------
    +PEEP
    +Intermittent PEEP
    +Apnea ventilation
    各々のモードで成人・小児の切り替えができる。
 
2)基本データ
    ガス供給システム・・・・・・初期流量最大8ms間に2L/s
    最大吸気ガス流量
      強制換気・・・・・・・・・・・・120LPM
      ASB・・・・・・・・・・・・・・EVT-1000は〜120LPM、EVT-2000は〜150LPM
      吸気ガススルーレート・・・・・・・250L/s 
      最大強制換気数・・・・・・100BPM
      最大SIMV回数・・・・・・60BPM
 
3.制御回路,制御機構
1)制御機構の概説
 EVT-2000はコンピューター制御の人工呼吸器で、MPUにはモトローラ68000が使用されている。信頼性が高く比較的安価な圧トランスデューサーを多用する事でほとんどのセンシングを行なう。これらの圧トランスデューサーは自動的に校正される。そのためユーザーは全くと言ってよい程、機械管理を意識する事なく使用できる。
2)機械的機構の特徴
 EVT-4000とほとんど同じ。呼気弁ユニットは、EVT-1000では複雑な構造の高コストのものが採用されていたが、EVT-2000以降は改良され、簡単軽量のものに変更された。
3)ガス流量計測
 EVT-4000とほとんど同じ。
4)吸気バルブ、呼気バルブ
 EVT-4000とほとんど同じ。
4.ニューマティック回路(図III-6-14)
 基本的にはEVT-4000とEVT-2000に大差はないが、EVT-2000には酸素濃度センサーs3.1を回路より切り離すバルブY3.3がない。そのために校正の際には患者より切り離す必要がある。O2 センサの校正ガスは使用後大気中に開放する構造になっている。システムの駆動ガスは通常は圧縮空気で作動する。エアー配管等のトラブルが起きた場合、ニューマチック回路図のY1.1バルブが切り替わって酸素で駆動する。これはEVT-1000でのエアーが遮断されると動作が停止する欠点よりの改良点である。
5.制御ソフト
1)トリガー方式
 呼気弁直前の気道内圧変動を感知する圧トリガー方式を基本としているが、ASBでのトリガー感度設定はフロートリガー方式である。IPPVモードでは本体左のグラフィックディスプレイ下のファンクションキーまたは上の換気モード切替キーのIPPVモードキーを短く押して波形画面を設定画面に変えてtrigger の項目を選んで感度を0.2〜5mbar,off を選択できる。SIMV,MMV では強制換気のトリガー感度は0.7mbar にASBのディマンド感度は0.2mbar に固定されている。
2)IPPV
3)PLV             
4)SIMV             
5)ASB              EVT-4000と同じ。
6)Intermittent PEEP
7)MMV
8)BIPAP
 EVT-1000によって導入されたBIPAPは、EVT-2000で汎用のモードに発展した。このモードは2つのレベルのCPAPの圧(高圧相:Pinsp=0〜80mbar,低圧相:CPAP=0〜35mbar)を自発呼吸に同調しながら、設定した時間幅(BIPAP-APRVの場合0.2〜60秒)で交互に切り替わり、呼吸を補助する。CPAPの圧が低圧→高圧あるいは高圧→低圧へ切り替わるときにはトリガーウィンドが開く。低圧相から高圧相への切り替え条件にはフロートリガー(1〜15LPM)が採用されている。逆の場合は1 LPM以下が用いられている。BIPAP,BIPAP-APRVでは、トリガーウィンドーは各相の終末25%である。BIPAP-SIMVでは、低圧相の時間が0.5s以下なら低圧相にトリガーウィンドーはない。0.5-10.5sであればトリガーウィンドーは低圧相の開始後0.5s以降に設けられる。10.5s以上であれば低圧相の終末10sがトリガーウィンドーになる。高圧相にはいづれの場合でも終末25%にトリガーウィンドーが設けられる。
9)Apnoea ventilation(無呼吸バックアップ)
 MMV による低換気へのバックアップモードがあるので無呼吸バックアップ機能は不要と思うが、EVT-1000よりEVT-2000へバージョンアップした際に無呼吸バックアップ機能"Apnoea ventilation"が追加された。この機能はASB モードに付加することができ、無呼吸が設定した時間(15〜60秒で設定可能)持続するとアラームを鳴らすと同時に強制換気(IPPV/assist)に移行する。 動作条件はツマミの設定どおりである。BENETT-7200aeの"Apnea ventilation"と似ているが、BENETT-7200ae では"Apnea ventilation" 中に自発呼吸を検知すると自動的にIPPV動作が解除され自発呼吸動作に戻るが、Evita では操作者が確認してリセットキーを押さないかぎり解除されない点が異なっている。なお無呼吸アラーム"Apnoea alarm"はIPPVモードは15秒固定、その他のモードでは15〜60秒で可変となっている。(初期値15秒)
10)PEEP compensator(PEEP補正)
 EVT-4000と同じ。
11)Leak compensator(リーク補正)
 IPPV/controlモードのみで有効。リークがあってPEEPが設定値より低下すると、リーク補償機構が働いて最大20LPM のガスが供給される。IPPV/assist モードではこの補償機構は働かない。これは補償機構が働くことによってトリガー作動を妨害する危険を排除できないからである。SIMVやCPAPモードではリークが発生したときは自発吸気と同様に最大120LPMガスを供給してPEEPやCPAPの圧が下がらないように動作する。
12)ILV(左右肺独立換気)
 オプションのエビタバスを組み込めば2台のEvita を同期させた ILV(Independent lung ventilation)が可能になる。
13)出力
 オプションのエビタリンクを組み込めばRS-232C によるデジタル出力が可能である。このボードを組み込んだEVT-2000とオプションのエビタビューを組み込んだWindowsパソコン(windows3.1もしくはwindows95 動作環境)を接続すると、パソコンモニタをEVT-2000のスレーブモニタのようにして使用することができる。(波形やトレンドを表示)またオプションのエビタバスを組み込むと気道内圧、吸気呼気ガス流量、換気量の項目についてアナログ出力も可能である。COオプションキットを組み込むとEt COの波形と数値を表示することが可能である。
14)Intrinsic PEEP測定
 呼気終末時に呼気弁吸気弁を閉じてIntrinsic PEEP(内因性で生じるPEEP)の圧とそれによるトラップボリュームを計測することができる。
15)P0.1 の測定
 吸気開始がに認識されたのち、100msec後の気道内陰圧をP0.1 (ピーポイントワン)と言う。P0.1 開始キーを押した後に認識した吸気開始から100msec間は呼気弁も吸気弁も閉じている閉塞期間となる。P0.1 は呼吸中枢の出力レベルの指標であり、人工呼吸器からのウィーニング成否の予測に用いられる。
6.操作体系(図III-6-15)
1)EVT-1000には共有ツマミがあったが、EVT-2000では共有ツマミはなくなった。一回換気量、酸素濃度、呼吸回数など基本的な設定項目はパネルのツマミに設置されているので、アナログ的に設定する。換気モードによって設定する項目が変わるので、ツマミのランプが点灯し設定が必要な項目が示される。
2)MMV
 MMVの目標分時換気量は一回換気量とfIMV の積で設定される。他の機器では目標分時換気量が独立した項目になっている場合が多いので、この点は注意が必要である。
3)特殊機能
 基本的な機能は予備知識がなくても設定可能であるが、 BIPAP-APRV、BIPAP-SIMV、MMV、無呼吸バックアップ、ILV 、過換気モニタ、ASB トリガー感度設定、あるいは電源投入後の成人小児の切り替えには通常の操作と別の操作系が用意されている。これらの機能を選択あるいは設定変更をするには液晶パネル面に表示されるメニュー画面を押して希望する項目を設定する。たとえば過換気モニタを設定するには煩雑なキー操作が必要になる。こういう機能を使うユーザは、それ相応の専門知識があると見なされている。
7.モニタ、アラーム機能
 患者関係は、必要な設定をすれば下記の条件に自動設定される。分時換気量だけはマニュアルで設定する。
1)酸素濃度
設定値60vol%以下の場合は設定値と実測値との間に4vol%以上のずれが生じたとき、設定値60vol%以上の場合は設定値と実測値との間に6vol%以上のずれが生じたアラームが発生する。
2)気道内圧
Pmax で設定した値+10 mbar以上になった場合。ピーク値がPEEP+4.5mbarを越えない場合。
3)呼気分時換気量
設定した上限、下限を逸脱した場合。
4)無呼吸
設定した秒数(15〜60秒、初期値15秒)以上呼吸が停止した場合。
5)機器作動異常
 酸素供給、圧縮空気供給、O/AIRミキサ、圧測定、ファン、フローセンサ、呼気弁ユニット、O2 センサ、温度センサ、電源、内部電子回路、内部ニューマチック回路の異常を警報する。
また、患者回路を開放しても警報する。この場合は100%O2 キーを押してから開放すれば、自動的にアラーム消音状態になる。
8.ディスプレイ機能
 各ツマミに対応した数字の表示以外に、モノクロ液晶スクリーンによる気道内圧、吸気ガス流量、もしくはオプションでCO2のいずれか一つがグラフ表示できる。特殊機能を使用する場合はメニュー画面がここに展開する。
9.患者回路構成、加湿器
 EVT-4000と同じ。
10.メンテナンス
1)センサの校正
 エビタには多数の圧センサやフローセンサ、温度センサ、O2 センサが使用されているが、その内、圧センサと温度センサは自動校正されている。O2 センサと呼気フローセンサについては必要に応じて、あるいはセンサの交換時や精度に疑問があるとき、アラームが鳴ったときに校正する必要がある。フローセンサの場合は患者から回路をはずす必要はなく、いつでも校正可能である。この場合はフローのキャリブレーションキーを押すだけである。O2 センサについては少しの酸素濃度の上昇も危険となる小児にも使用されるため、校正ガスが患者に流れるのを防ぐためにO2 センサ校正中は患者を回路からはずさないと校正を実施しないようになっている。(約1分)
2)呼気弁
 呼気弁は着脱式のユニットになっていて、ユニットごと取り外し、水道水で流し洗いする。従って通常使用では分解洗浄の手間は不要である。洗浄後オートクレーブで滅菌乾燥する。この呼気弁ユニットはEVT-1000と比較してはるかに軽量・安価になった。本体には滅菌予備として合計2つ呼気弁ユニットが付属している。
3)呼気側の流量計      EVT-4000と同じ。
4)O2 センサ
11.定期点検
 6ヶ月ごとに技術サービスによる点検が必要。
12.欠点
 ネブライザガスはY1.1バルブを使用して切り替えて駆動ガスを使用することによって口元での酸素濃度の変化を押さえているが、酸素濃度60%で一回換気量を少なく設定した場合、最大で±13%誤差が生じる。
 
EVT-880
 EVT-880はEVT-2000より圧上昇速度可変(slope control of pressure rise) ,BIPAP,EMMV機能と液晶ディスプレーを省いて、コストを下げた機器である。他の点に差はない。
 
マイクロベント EMV-700
1.特徴(図III-6-16)
 EMV-700 マイクロベントはニューマティック方式のディマンドバルブによりASBやディマンドフローに対応する。ガス制御の多くはニューマティック回路により機械的に行われるので、トリガー感度やディマンド感度、吸気ガス流量などはエビタに比べて多くの制限がある。しかし、安価であり、コンパクトであること、操作がシンプルでわかりやすいこと、口元のフローセンサによるフロートリガー方式であること、呼気換気量を常にモニターしていること、ASBが可能であるなど、充分な基本性能を有する。
 
2.性能
1)利用できるモード
    IPPV(=Conrol/Assist)
    ASB (=PSV)
    SIMV+ASB
    +PEEP
    +Apnea ventilation
2)基本データ
 デマンドガス供給システム・・・約−1mbarで供給開始
 最大吸気ガス流速
    強制換気・・・・・・・・・・・・ 80LPM  
    ASB・・・・・・・・・・・・・・120LPM  
    吸気ガススルーレート・・・・・・・データなし   
    最大強制換気数・・・・・・・・60BPM  
    最大SIMV回数・・・・・・60BPM  
 
3.制御回路,制御機構
1)制御機構の概要
 マイクロベントはコンピュータ制御だが、ガス制御のほとんどをニューマティック回路により機械的に行うので、シングルCPUで対応する。
2)機械的機構の特徴
 電気的な制御系は少なく、電磁弁関係のほとんどはバイステーブルもしくはモノステーブルの動作をする(すなわちガス経路の切り替えや、ガスのon−offを担当する)。それ以降のガス制御はニューマティック回路に依存する。(1)ASB圧の設定がPEEP/CPAP圧設定より少ない際の調整機構や(2)バルブ、スイッチの作動に伴うサージ流の抑制やダンピング、(3)ディマンドバルブをあらかじめ開いておきレスポンスの改善と吸気仕事量を減じる(LA precontrolledと呼ぶ)機構、(4)呼気弁の駆動に、吸気ガス圧をそのまま利用する為の機構、等にニューマティック回路技術が駆使されている。
3)ガス流量計(図III-6-17)
 口元のフローセンサによって流量を把握する。このセンサには内部に金属製の仕切り円盤があり、流量によってこの円盤がしなってガスの流れる系が変化する。バリアブルオリフィス(直径が変化する)タイプと呼ばれる。フローセンサは人工呼吸器本体と2本のチューブによって接続される。この2本のチューブ間の差圧より、演算によって流量を計測する。吸気側呼気側両方向に流量を検出できるので、これを利用してトリガー信号や、リーク量を検出する。
4)吸気バルブ
  吸気バルブは、2系統用意されている。(1)強制換気用には、強制換気のON/OFFを行うI:E valveと吸気流量を制御するMV valve、(2)自発呼吸用(CPAP,ASB)には、ディマンド流を供給するLA(ディマンドバルブ)、がある。
 MV valveのみ、サーボ制御を受ける。一回換気量と吸気時間の設定に応じてサーボバルブが働いてバルブの開度を調節している。一回換気量や吸気時間の設定は数m秒単位で変化しない。つまり、作動が遅いことは問題とはならないので、簡単な制御系を使える。ディマンドバルブLAはバネ圧を利用した機械バルブで、入力した基準圧になるように駆動ガスを調節する増幅器として作動する。
5)呼気バルブ
 呼気バルブはマッシュルーム弁である。
 
4.ニューマティック回路(図III-6-18)
 内部のほとんどは機械制御になっているのでニューマチック回路はエビタと比べてかなり複雑である。
 O2/Airのガスは、O2/Airミキサで混合される。入力フィルタF1で中央配管よりの埃を除去した後、内部駆動ガスを作るための減圧弁DR1 への経路と、ディマンドバルブLAへの経路に分かれる。LAは患者自発呼吸時の吸気ガスと、ベースフロー、ASBを作り出す。電源が入ると、Pn solenoid valveはONになる。R4は5LPMの定常流を供給し、PEEP圧を安定させ、PEEP制御系のダンパーとして作動する。
 DR1 のすぐ後にある I:E valveは強制換気の吸気時に開きガスをMV valveに供給し、呼気時間には閉じる。MV valveは一回換気量/吸気時間の演算結果の流量に基づいて開度が調整されている。
 RV3 は一方通行弁、SV1,SV2,SV3 は回路内が異常な高圧になったときガスを開放するための安全弁である。PAは吸気側の呼吸回路を接続するためのアダプタである。NV valveは、ガス供給が遮断されたときでも患者自発吸気を確保できるようにした吸気バルブである。Humidifierは加温加湿器である。
 PEEP/CPAP valveはツマミと直結されておりDR1 からのガスを逃がすことによって圧力を調整している。このバルブで調整されたガスはExpiratory solenoid valveによって呼気時間中にExpiratory valve(呼気弁ユニット)を押さえて PEEP/CPAPを作る。吸気時間中はPH valveが切り替わり、 I:E valveから分岐した駆動ガスが呼気弁ユニットを押さ呼気弁を閉じる。
 モード切替スイッチはニューマティック弁で、SIMV/CPAPにするとディマンドバルブLAに駆動ガスを供給する。R3はモード切替によって生じるサージ流(サージ圧)を防ぐ為にある。圧センサーP-LAは電気回路にスイッチの位置を知らせる。
 SIMV/CPAPモードでは、RV7やASB solenoid valve,RV2,R2を経由したガスが、LAの基準圧入力(LAの左側から入る)に入いり、駆動ガスよりベースフローbasic flow(9〜15LPM)を作る。これはLA precontrolledと呼ばれ、LAの応答性を改善し、患者の仕事量を低減する。この流量はPEEP/CPAP圧の設定により変化する。トリガ信号を検知したときASB solenoid valveが右斜上向矢印から左向矢印の位置に切り替わり、LAに入る基準圧がPEEP/CPAP valveで作った圧からASB valveで作った圧に切り替わる(ASBの設定がCPAPの設定より高い場合)。逆にASBの設定がCPAPの設定より低い場合には、PEEP/CPAP valveで調整された圧が、RV9,Expiratory solenoid valveを経由して呼気弁に加えられる。LAにもPN solenoid valve,R1,RV6,ASB solenoid valveを経由したガスがRV2,R2を通じて入力される(CPAP時と同じ圧がLAに入力される)。
 右下のAutozero solenoid valveは口元のフローセンサを自動的に校正するためのバルブである。3分間に一度自動的にフローセンサの2つの圧入力を短絡させて差圧センサのゼロをとる。口元のフローセンサは差圧センサが使われている。R5,R6,R9はフローセンサから異物(水など)が機械内部に入り込むことを防ぐために微流量のガスを常時流している。
 
5.制御ソフト
1)トリガー方式
 フロートリガー方式で、すべてのトリガーを口元に位置するフローセンサーによって得ている。感度は強制換気には3LPM、ASBには8LPMでいづれも固定である。なおCPAPのディマンドはフローセンサと関係なくディマンドバルブによる圧方式でありおよそ-1mbarの感度である。
2)IPPV
 これは通常のsCMVを意味する。吸気ポーズ時間はない。
3)Pmax
 エビタのPmax はPLV 機能とアラーム・圧開放との2つの機能を意味したが、マイクロベントにはPLV 機能はない。このためマイクロベントのPmax のツマミは、そのまま圧アラームの上限値であり、圧開放値である。
4)SIMV
 SIMVトリガウィンドは5秒固定で、SIMVサイクルの最初のトリガに対してのみ強制換気がおこなわれる。SIMVを12回以上に設定するとSIMVサイクルの時間の全部がトリガウィンドになる。1回のSIMVサイクル中に初めておこなった吸気に対してトリガーし強制換気をおこない、残りの時間が自発呼吸相となる。次のトリガーウィンドの前に開始された吸気が次のトリガーウィンドまで続いた場合は、次のトリガーウィンドの開始と同時に自発吸気は強制換気へ移行する。マイクロベントでは1分間に設定したSIMV回数強制換気がおこなわれ、自発呼吸があっても強制換気回数は変わらない。(設定値±1回/分)またSIMVモードで回数をゼロにするとCPAPモードとなる。
5)ASB
 Drager社ではPSV類似の自発呼吸補助モードをASBと読んでいる。マイクロベントの場合はエビタとは異なりASBはエビタでいうと圧維持期phase-2 だけである。CPAPもしくはASB を付加したCPAPモードにしたときは自動的にリークや事故検出のための低圧アラームが設定されるので、CPAPを少なくとも 3mbar以上に設定しないと低圧アラームが鳴り終わらない。自発吸気時に陰圧になることを見越して 5mbar以上のCPAP、もしくはASBに設定した方がよい。
6)Apnea ventilation(無呼吸バックアップ)
 この機能はCPAPモードに設定したとき動作する。無呼吸が15秒持続したときアラームを鳴らし、無呼吸発生後30秒後には強制換気に移行する。一回換気量と吸気時間のツマミ設定値に従って強制換気を8回/分おこなう。無呼吸バックアップ動作を解除するためには操作者が確認してリセットキーを3秒ほど押すと解除される。
7)PEEP
 IPPV/assist モード(SIPPV) を含む、どの換気モードでも5LPM以上のベースフローを流しているのでこれ以下のリーク量であればPEEPもしくはCPAPレベルは確保される。
8)バッテリー駆動
 内蔵のNiCdバッテリーにより約2時間の作動が可能である。使わないときでも充電のために電源に接続したままがよい。外部電源使用時はDC12v,390mAを消費する。
 
6.操作体系(図III-6-19)
 マイクロベントの操作方法は簡単明瞭である。換気動作としては、一回換気量、吸気時間、呼吸回数をツマミによってアナログ設定するだけであり、これは全モードにおいて共通である。換気モードによって設定する範囲が変わるので、ツマミ周囲の目盛を色分けして表現している。
 
7.モニタ、アラーム機能
 マイクロベントのアラームはツマミで設定するか、固定かのどちらかである。アラームの種類は全部で20数種類と豊富である。
1)気道内圧
 上限値はPmax のツマミで設定する。下限値は IPPV,SIMVモードでは強制換気がおこなわれても2回続けて+5mbarを越えなかった場合に鳴る。あるいはCPAPモードでは気道内圧が3mbarより低くなった場合に鳴る。さらに呼気弁不良が起きた場合の備えとしてPEEPが+22mbar以上になった場合PEEP high アラームが鳴る。
2)呼気分時換気量
 二重ツマミで上下限を設定する。
3)無呼吸
 15秒以上の無呼吸がある場合
4)リークアラーム
 フローセンサを通る呼気方向の分時換気量が吸気方向の分時換気量の4割以下になるとLeakage アラームが発生する。
5)機器作動異常
 酸素・空気の供給圧異常、圧測定部のエラー、フローセンサ、呼気弁ユニット、内部バッテリ、内部回路の異常などを警報する。
 
8.ディスプレイ機能
 マイクロベントでは波形表示機能は無い。各種の測定データあるいは吸気流速などの設定データは細長い液晶表示部をキーを使って切り替えて表示させることができる。
 
9.患者回路構成、加湿器(図III-6-20)
 パスオーバー型の加温加湿器(アクアポール)か、ディスポ型の加温加湿器(フィッシャー&パイケル MR-410)温度管理を精密にする必要がある場合はヒータ入りの加温加湿器(フィッシャー&パイケル MR-730)の内から選択することができる。アクアポールやMRー410の場合は口元に温度センサをつけるが、これはアラーム用でフィードバック制御はおこなわないので、簡単な患者回路が好みなら、この温度センサは使用しなくても良い。
 
10.メンテナンス
1)センサの校正
 マイクロベントでは1つの圧メータと4つの圧センサが使用されているが、圧センサについては自動校正されている。圧メータは機械式なのでドライバなどでゼロ調整する。
2)呼気弁
 呼気弁は着脱式のユニットになっていて、ユニットごと取り外し、水道水で流し洗いする。分解洗浄も手軽におこなえる。洗浄後オートクレーブで滅菌乾燥する。本体には滅菌予備として合計2つ呼気弁ユニットが付属している。
3)呼気側の流量計
 このフローセンサは差圧式で滅菌可能である。内部の金属の羽を損傷しないよう気をつけて洗浄・滅菌する必要がある。
 
11.定期点検
 6ヶ月ごとに技術サービスによる点検が必要。
 
12.欠点
 ネブライザーガスはO/Airミキサで濃度調整されたガスを使用するので口元での酸素濃度の変化は無いが、換気量は増える。ネブライザ駆動ガスはおよそ3LPMだから I:E比が 1:2の設定だと、患者の分時換気量は1LPM増えることになる。またネブライザガスはコネクタを接続すると3LPMで出っぱなしになるのでネブライザOFFにするには駆動ガスのコネクタをはずし、ネブライザを呼吸回路からはずす必要がある。
 マイクロベントは機能を絞り込んで使いやすくする意図がありながら患者の安全重視のためアラームが豊富である。このアラームは1つのアラームにつき1回アラーム消音キー(2分間有効)を押す必要がある。無呼吸アラームが生じたときなどは同時に分時換気量低下アラームも生じているので何度も消音キーを押す必要がある。
 使用中、吸引のために回路を開放すると60秒後に自動的にバックアップ換気に移行していることがある。吸引後リセットと共用のアラーム消音キーを押す習慣をつける必要がある。
 
 
 
 
 
図III-6-1     EVT-4000の外観
図III-6-2     EVT-4000のHPSV
駆動部の動きがプランジャーを通じてBall AをValve seat Bに押しつける程度を調整する。この動きによりBall AとValve seat Bとの隙間を調整し、ガスの流量を規定する。
図III-6-3     EVT-4000の呼気弁とフローセンサー
呼気弁ボディー3.1はのレバー3.3を押すと脱着できる。フローセンサー3.1も容易に脱着できる。構造は図に示したように単純であるが、呼気弁ボディーを押し込む方向が意外と直感しにくく、3次元パズルのように迷ってしまう。通常はガス通路の水洗だけで、バルブメンブレンの脱着できるまで分解する必要がないと言われている。メンブレンを逆向きに入れると呼気弁が閉じないので正常に作動しない。分解した場合は特に注意が必要である。
図III-6-4     EVT-4000のニューマティック回路
患者に装着したまますべてのセンサーのキャリブレーションが可能になった点が、EVT-2000との相違点である。
図III-6-5     PLVの作動
P maxに圧が達するとPCVのように作動し、吸気フローが低下してP max以上の圧をカットしてくれる。
図III-6-6     AutoFlowの作動
ボリューム強制換気を圧換気(BIPAP)で行うモードで、換気圧は自動調節される。すべてのモードの強制換気に利用できる。SIMVやMMVに用いると、グラフィックモニター上でも強制換気(CMV)と自発呼吸(ASB)の違いが認識できないほどなめらかに作動する。
図III-6-7     ASBの作動
図III-6-8     interm. PEEPの作動
sighの代わりに利用する。設定するとPEEPが周期的に上昇する。
図III-6-9     EVT-4000の設定画面
換気モード設定のキーを押すと現れる。この画面が標準画面である。
図III-6-10     EVT-4000のグラフィック画面
設定画面でもグラフィックが1波形描画しているが、画面切り替えキーを押すとグラフィックを任意の2波形表示できる。黒塗りは強制換気相で、グレー表示は自発呼吸相である。SIMVでは、吸気や呼気の途中でこれらが自在に切り替わるのが観察できる。
図III-6-11     EVT-4000の患者回路
図III-6-121    EVT-2200の外観
図III-6-13     EVT-2200の操作パネル
主要な設定項目は項目キーを押して選択したあと、ロータリーノブで数値を入力する。その他の機能はディスプレー横のファンクションキーで設定する。
図III-6-14     EVT-2000の外観
図III-6-15     EVT-2000のニューマティック
図III-6-16     EVT-2000の操作パネル
図III-6-17     マイクロベント外観
図III-6-18     マイクロベントのフローセンサーの模式図
メンブレンの両端の差圧により流量を計測する。
図III-6-19     マイクロベントのニューマティック回路
図III-6-20     マイクロベントの操作パネル
図III-6-21     マイクロベントの患者回路
 
 
図III-6-21
図III-6-22
図III-6-23